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    トップページ >> 心理学事典 >> アルコール依存症の概要

    アルコール依存症は精神障害として考えられるようになってきました

     アルコール依存症は、長期間にわたって慢性的にアルコールを摂取し、身体的、精神的、そして社会的に障害をきたしている状態です。かつては「アル中」と呼ばれ、本人の意志に問題があるとされてきましたが、近年は医学的見地から精神障害の1つとして理解されるようになってきました。物理的にアルコール依存を脱却させるだけでなく、精神的なケアも重要になってきます。

    アルコール依存症は薬物依存の一種と考えるべきです

     依存性とは、摂取することによって様々な問題が出ているにも関わらず、それを止めることができなくなる性質のことです。麻薬や覚醒剤には依存性がありますが、同様にアルコールにも依存性があります。「お酒」と聞くと普通の飲み物のようですが、依存性があるという観点では薬物の一種と考えられます。具体的には自分の意志で飲酒のコントロールができなくなり、常にアルコールに対する強い渇望がある状態になります。

    耐性ができることでアルコール摂取量が増加する傾向が見られます

     習慣的な飲酒を続けていると、徐々にアルコールに対する耐性ができてます。「お酒に強くなる」といわれる状態がこれにあたり、気持よく酔うまでに必要になるアルコール量が増えてきます。習慣的な飲酒自体は悪いことではないですが、何かのきっかけで飲酒量が増加するとますますその増加に拍車がかかり、アルコール依存症になってしまう危険性はあります。

    飲酒のコントロールができるかできないかは重要なポイントです

     自分の意志で飲酒のコントロールができなくなるのは、アルコール依存症の重要な特徴で、これをコントロール障害と呼びます。コントロール障害があるかどうかはその人の飲み方を見て判断します。平日の昼間から飲酒する、毎日飲酒を続けそれが止められない、何よりも飲酒を優先する、アルコールをいつでも準備しているなどが見られる場合はコントロール障害があるとみなし、アルコール依存症を疑った方がよいです。

    体内のアルコールが減少し出すとアルコール離脱症状が起きます

     アルコール依存症の人が断酒を始めると、アルコール離脱症状が見られます。そのまま断酒を続ければ、たいていは数日以内に消失します。しかし、この離脱症状が辛くて、それを打ち消すために再び飲酒してしまうことは多いです。離脱症状は飲酒を止めて数時間でである早期離脱症状群と、2~3日目に生じる後期離脱症状群に分けられます。たいていの場合は3日ほど断酒すれば、アルコール離脱症状はなくなります。

    早期離脱症状群は手や全身の震え、後期離脱症状群は幻視などです

     早期離脱症状群は全身の震え、発汗、不眠、吐き気、血圧上昇、不整脈などです。飲酒によって軽快しますが、その場合は飲んだアルコールが新たな離脱症状の原因になるという悪循環に陥り、アルコール依存症から抜け出せません。後期離脱症状群は幻視、見当識障害などです。幻視は、虫や小動物が群れて見えるものが多く、幻聴を伴うこともあります。幻視、見当識障害によって興奮してしまうこともよくあります。

    アルコール依存症には遺伝性があり家族内で発症しやすいです

     親がアルコール依存症の場合、子供もアルコール依存症になる危険性はそうでない場合の3倍と言われています。日本人の半分弱は、アセトアルデヒドの酸化能力が弱く、アルコールを飲むとすぐに顔が赤くなってしまいます。このような人はアルコール依存症になる確率は低いです。アセトアルデヒドの酸化能力が正常な人はアルコール依存症になりやすく、この体質は遺伝することが知られています。

    アルコール依存症は人生に大きな悪影響を与えます

     アルコール依存症はもちろん肝硬変など身体的な病気にも至りますが、それだけではありません。うつ病など精神的な病気も併発しますし、社会的な問題も起きます。30歳代でアルコール依存症になる人は多いですが、自分の健康だけでなく、家庭や仕事を失って自殺などで死に至るケースも見られます。一度アルコール依存症になれば、回復するには断酒するしかありません。できるだけ早く適切な診療を受けましょう。