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    心理的ストレス

    心理的ストレスの研究はラザルスによって始まったと言えます

     ハンス・セリエの学説は生理学的なストレス全般のメカニズムに焦点を当てたものであり、心理学的なストレスについて考慮したものではありませんでした。ラザルスは認知的評価の観点からストレス理論を提唱し、心理学的ストレスに焦点を当てて学説を唱えました。現在の日本では、一般的にストレスといえば、心理学的ストレスのことを指し示すまでになっています。  

    ラザルスは人間と環境の相互作用を考慮するべきと提唱しました

     それまではストレスとストレッサーは分けて考えられてきましたが、ラザルスは人間と環境の相互作用を考慮すべきだと提案しました。人間はストレスを受けるとその刺激がどういったものかを判断し(認知的評価を行い)、それに対してどのように対処できるか考え、実行に移します。このように、人間は環境に変化を与えながら、ストレスに対処していくことができます。この過程をコーピング(対処)と呼びます。

    人間がある出来事に出会うと二段階の認知的評価を行います

     ある出来事に対してストレスを感じコーピングを行う前に、人間はその出来事を認知的に評価しています。まず一次評価として、出来事が自分にとって「無関係」か、「無害-肯定的」か、「ストレスフル」かの判断を行います。「無関係」はその出来事が自分とはあまり関わりないと判断した場合です。「無害-肯定的」とはその出来事が自分に害がないか、プラスになるものであると判断した場合です。

    ストレスフルと判断する場合には様々な場合が含まれています

     例えば検診で病気が見つかったとします。これから急に病気と向かい合わなければいけなくなってしまったとき、「害-損失」であると認識し「ストレスフル」と判断します。また、現在は病気の自覚症状がないですが、これから苦痛を伴う治療を受けなければいけなくなるかもしれない場合は「脅威」と認識し、同じく「ストレスフル」と判断します。また、病気が見つかったことを自分の体や健康と向き合って体を大事にする良い機会ととらえた場合は、「挑戦」と認識し、同じく「ストレスフル」と判断します。

    二次評価は自分にどのような選択肢があるかを判断する段階です

     「ストレスフル」と判定された出来事に対して、それにどう対処するべきか、どのような選択肢があるかを判断するのが二次評価です。過去の経験、使える資源、自身の性格などに基づいて、いつ、どこで、どのようにすれば最も良い結果が得られるのかを考えて方針を立てていきます。この方針に基づいて、選択されたコーピングを実行に移します。そして、そのコーピング結果を再評価し、失敗であった場合はコーピングの再選択を行います。

    コーピングには大きく分けて2つの戦略があります

     コーピングには、主に問題解決を中心に置く「問題焦点型」と感情を中心に置く「情動焦点型」の2種類があると考えられています。「問題焦点型」のコーピングの場合は、ストレスフルな状況とその原因を根本から解決し除去しようとします。一方「情動焦点型」のコーピングの場合は、気晴らしをしたり、先のことをあまり考えないようにしたりと、不快な感情をうまくコントロールすることが中心です。

    コーピングの2つの戦略にはそれぞれ短所があります

     「問題焦点型」のコーピングでは、対処がわかっていても物理的・状況的に解決が不可能な場合が現実には数多くあります。そうなるとかえってイライラが募って、ストレスが増加してしまうこともあります。一方「情動焦点型」のコーピングは、現実世界に何か働きかけているわけではないので、時間が解決してくれる問題でない場合は、根本的な解決に至りません。実際には2つタイプのコーピングを上手く組み合わせることが必要となります。